第1話
カチャ。ギイィ。バタン。
「ただいまー」
今日も返事はない。我が亜富(あとみ)家は母子家庭なので当然と言えば当然なのだが、やはり家に帰ったときに中が閑散としていると、ほんの少し寂しい気分になるのは変わらない。ひとりでいる方が気楽でいいと思う僕も、こんなときだけは兄弟姉妹がいる子供たちを羨ましく思うのだ。まぁ、自分が素直に『寂しい』と言えないことが悪いのだが。
玄関を上がると、僕は真っ先に台所へと足を運んだ。母の書いた置き手紙の内容を確認するためだ。その日の晩ご飯のメニューや、個人的な日記など、毎日色々書いてある。そして、僕がその伝言に対する返事を色々と手紙の隅に書く。これが続くうちにいつの間にか、我が亜富家の当たり前のコミュニケーション方法となっていた。
今日の内容は「おつかい」らしい。手紙の隣には五百円玉が一つ。しかし、なんだこれは……
僕は一瞬、氷のように固まったが、体はすぐに溶けて動きを再開した。ついでに溜息も一緒に出てくる。
なぜこんな回りくどいことをするのかと呆れながら、僕は五百円玉をいつも持ち歩いているマイバッグに入れると、再び玄関へと向かった。
「……いってきます」
ギイィ。バタン。カチャ。
手紙の内容
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